【イントロ】
「半導体関連株で、世界に唯一の技術を持つ日本企業ってないの?」「最先端チップの製造に欠かせない装置を、世界中どこも代替できない会社があるって本当?」
そんな疑問への答えとして、多くの投資家が注目するのがレーザーテック(6920)です。EUV(極端紫外線)リソグラフィ向けのマスクブランクス検査装置において、世界シェアはほぼ100%。半導体の最先端プロセスを支える「縁の下の力持ち」として、TSMC・Samsung・Intelといった世界トップ半導体メーカーに欠かせない存在です。
ところが2025年6月期は11期連続で最高益を達成した直後、2026年6月期の会社予想は売上▲20%・営業利益▲29%という大幅な踊り場を示しました。「絶対的な独占企業なのに、なぜ業績が落ちるのか?」「今が買い時なのか、それとも見送りか?」——この記事では初心者の方にもわかりやすく、レーザーテックの実力と課題を整理します。
目次
【結論】
レーザーテックは「世界に代替が存在しない独占技術」を持つ、稀有な日本企業です。EUVマスク検査装置において世界シェア100%という状況は、半導体製造装置の世界でも極めて異例であり、長期的な競争優位性の源泉となっています。
ただし現時点では、いくつかの重要な留保が必要です。2025年6月期の受注高は前年比61.4%減の1,052億円と急減しており、この落ち込みが2026年6月期の業績に直接響きます。受注の回復時期が不透明な現状では、「今すぐ大きく買い増す」よりも、受注動向を注視しながら少しずつ向き合う姿勢が現実的と考えます。
中計では2030年6月期に売上4,000〜5,000億円・営業利益率35%以上を目標に掲げており、半導体業界の設備投資サイクルが回復すれば、高い収益力への復帰は十分に期待できます。KLAによる競合製品の開発動向や、主要顧客の投資計画を定期的に確認しながら、3〜5年の視点で向き合うことが重要です。
半導体の長期成長を信じ、世界唯一の独占技術に価値を感じつつ、業績の踊り場を許容できる長期投資家に向いている銘柄と考えます。
【銘柄の概要と強み】
「見えない欠陥を見つける」専門家
レーザーテックは1960年代に創業した、光学・レーザー技術を核心とする精密検査装置メーカーです。半導体の設計図にあたる「フォトマスク」や「マスクブランクス(マスクの素材)」の欠陥を、極めて高い精度で検出する装置を専業としています。
半導体の製造プロセスでは、まずシリコンウエハに回路パターンを焼き付けるための「マスク」を作ります。このマスクに少しでも欠陥があると、それがウエハ全体に転写されてしまい、製品不良につながります。最先端プロセスになるほど、回路の線幅が髪の毛の数千分の一以下になるため、検査に求められる精度は年々高まっています。
なぜ世界シェア100%なのか
EUVリソグラフィは現在、半導体の最先端量産プロセス(2nm・3nmなど)に不可欠な技術です。EUV光は空気中ですぐ吸収されてしまうため、マスクの扱い方・検査方法も従来とは根本から異なります。
レーザーテックはこのEUV向けマスク検査装置を世界で最初に実用化し、特に以下の2製品で圧倒的な地位を確立しています。
- EUVマスクブランクス検査装置:世界シェア事実上100%
- EUVペリクル付きマスク検査装置:世界シェア100%
この独占の背景にあるのは、光学・レーザー分野における数十年来の技術蓄積と、最先端プロセスへの先行対応の実績です。顧客であるTSMCやSamsungが次世代プロセスの開発を進める際、共同で装置開発に取り組む関係にあります。この「共同開発パートナー」の立場が、後発企業の参入を阻む大きな障壁となっています。
【スコア評価】
| 評価軸 | スコア | 判定理由(1行) |
|---|---|---|
| 今後の成長期待性 | ○ | 半導体微細化の長期トレンドに乗る独占企業だが、受注回復時期に不確実性あり |
| 今後の業績安定性 | △ | 受注急減・顧客集中・設備投資サイクルの影響を強く受けやすい構造 |
【詳細レポート】
① 市場シェア
レーザーテックのEUVマスク検査における市場支配力は、半導体装置業界でも際立っています。KLA(米国)が検査装置全般でグローバルリーダーですが、EUVアクティニック(EUV光を使った)マスク検査については、現時点でレーザーテックのみが量産対応品を顧客に供給しています。
ただし中長期的なリスクとして、KLAがEUVアクティニック検査装置の開発を進めていることが知られています。KLAが量産水準の製品を投入した場合、現在の独占構造が変化する可能性は否定できません。レーザーテックがこの独占を10年・20年維持できるかは、技術開発の速度と顧客との関係性の深さにかかっています。
また、2023年に日本政府がEUVマスク検査装置を輸出規制対象に指定したことで、中国向け売上比率は15%から6%程度に半減しました。これにより中国への販路はほぼ閉じた状態であり、今後の成長は日米欧台韓の先端ファウンドリ向けに集約されます。
② 財務・PBR
FY2025(2025年6月期)の実績は売上2,514億円(前年比+17.8%)、営業利益1,228億円(同+51.0%)と、11期連続で最高益を達成しました。営業利益率は約48.8%に達し、製造業としては驚異的な水準です。
一方でFY2026(2026年6月期)の会社予想は売上2,000億円(▲20%)、営業利益600億円(▲29%)と大幅な減速が見込まれています。この背景には、FY2025に受注高が前年比61.4%減の1,052億円まで急減したことがあります。受注は売上に数四半期のタイムラグをもって反映されるため、2026年6月期は受注急減の「後遺症」が業績に現れる格好です。
PBRは時価総額の水準により変動しますが、独占的な技術ポジションを持つ企業として、市場からは高いプレミアムが付きやすい傾向があります。踊り場局面では割安感が出やすい反面、受注の先行指標が悪化した局面では急落リスクも伴います。
③ グローバル比較
グローバルの検査装置市場では、KLA(米)がウエハ検査・パターン検査の幅広い領域でトップシェアを持ちます。ただしKLAのEUVマスク検査装置は開発段階にあり、現時点での量産対応はレーザーテックが唯一の供給元です。
ASML(オランダ)はEUV露光装置で独占的地位を持ちますが、マスク検査装置は手がけておらず、レーザーテックとは補完関係にあります。ASML製EUV露光装置の普及が進むほど、EUVマスク検査装置の需要も増える構造は、中長期的な追い風と言えます。
半導体の最先端プロセスへの設備投資は、TSMCの設備投資計画(年間数百億ドル規模)やIntel Foundryの動向に大きく左右されます。特にTSMCへの依存度が高いことは、レーザーテックの業績がTSMCの設備投資計画に連動しやすいことを意味しており、定期的に確認すべき先行指標のひとつです。
④ 中計検証
レーザーテックは2030年6月期を最終年度とする中期経営計画を掲げており、目標は以下のとおりです。
- 売上高:4,000〜5,000億円
- 営業利益率:35%以上
- 年平均成長率:10%以上
FY2026が売上2,000億円程度と仮定すると、2030年に4,000〜5,000億円に到達するには、残り4年で年率20%前後の成長が必要です。これは会社が掲げる「10%以上」を大幅に上回るペースであり、受注の回復が早期に実現しなければ、中計目標の達成は容易ではない計算になります。
一方で、EUV露光装置の普及が進む2nm以降のプロセスノードでは、検査装置への需要もより高まることが予想されます。TSMCが2025年以降に2nm量産を本格化させる計画を持っており、これに伴う検査装置需要の拡大がレーザーテックの受注回復の柱となるかが、中計達成の鍵を握ります。
⑤ 直近1年のIR分析
直近の最大のトピックは、受注急減です。FY2025の受注高は1,052億円と前年比61.4%減という大幅な落ち込みを記録しました。これは顧客の設備投資計画の後ずれや、半導体業界全体の在庫調整の影響を受けたものと見られます。
会社側は「受注の踊り場は一時的なもの」としつつも、具体的な回復時期の明示には慎重な姿勢を見せています。このような「回復時期が不透明な踊り場」は、機関投資家がポジションを縮小しやすい局面でもあり、株価の下押し圧力が続きやすい状況です。
顧客集中リスクについても、TSMC・Samsung・Intelへの売上集中は引き続き続いています。特定顧客の設備投資計画が変更された場合に業績が大きく動く構造は、リスク管理の観点で注視が必要です。
中国向け売上の減少については、輸出規制の影響が続いており、今後も大幅な回復は見込みにくい状況です。その分、先端プロセスを持つ顧客(TSMC・Samsung・Intel Foundry)への依存度がさらに高まることになります。
【まとめ】
レーザーテックは「世界で唯一、EUVマスク検査装置を量産供給できる企業」という、半導体業界でも稀有な独占的地位を持っています。光学・レーザー分野での深い専門性と、顧客との共同開発関係が長年かけて築かれた参入障壁であり、この競争優位性は一朝一夕には崩れないものと考えます。
3〜5年の視点で見れば、半導体の微細化トレンドが続く限り、EUVマスク検査の需要は中長期的に拡大する方向にあります。受注回復のタイミング・KLAの競合品開発の進捗・主要顧客の設備投資動向——この3点を定期的に確認しながら、長期的な視点で向き合える銘柄と言えるでしょう。
一方で、受注急減の「踊り場」がいつ終わるかはまだ明確ではありません。FY2026は業績の数字上は厳しい局面が続く見通しであり、短期的な利益を求める投資スタイルには向きません。
独占技術の価値を信じ、業績サイクルの波に動じない長期視点を持てるかどうかが、レーザーテックへの投資を考える上での最大の問いかけと言えるかもしれません。
投資は自己責任でお願いします。
免責事項 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。 株式投資には価格変動リスクがあり、投資元本を割り込む可能性があります。 投資判断はご自身の責任において行ってください。 詳しくは免責事項ページをご確認ください。