【レゾナック(4004)】CMPスラリー世界1位。半導体後工程材料のリーディングカンパニー

【イントロ】

「AI半導体ブームの恩恵を受ける日本株を探しているけれど、装置メーカーはもう株価が上がりすぎている気がする」「もう少し地味で割安に放置されている半導体関連株はないのか」

そんな問いに対する一つの答えが、レゾナック・ホールディングス(4004)です。2023年1月に昭和電工と日立化成(旧昭和電工マテリアルズ)の経営統合で誕生した、半導体材料・化学品の総合メーカーです。装置メーカーほど派手ではありませんが、半導体の「後工程」(パッケージング工程)で使われるCMPスラリー(研磨剤)で世界シェア1位、封止材でも世界トップクラスを誇る、いわばAI半導体製造の「縁の下の力持ち」です。2025年12月期は事業ポートフォリオ整理に伴う減損で減益となりましたが、本業の半導体・電子材料セグメントは過去最高益を更新。2026年12月期はコア営業利益+28.3%、当期利益165%増の大幅増益を会社自身が予想しています。


目次


【結論】

レゾナックは、AI半導体の急成長を「材料」という側面から支える企業です。CMPスラリー(特にSTI=素子分離用)で世界1位、半導体封止材でも世界トップシェアを持ち、後工程材料という景気変動を受けつつも継続的な消耗を伴う領域でリーディングポジションを築いています。2025年12月期は事業譲渡に伴う減損計上で全社の最終利益は減ったものの、稼ぎ頭である半導体・電子材料セグメントは売上収益・コア営業利益ともに過去最高を更新しました。2026年12月期は当期利益770億円(前期比+165.2%)と大幅な増益を会社が見込んでおり、構造改革の効果が数字として出始める局面に入っていると考えられます。

懸念点としては、半導体市況の循環性、統合シナジーが想定どおりに発現するかどうか、そして中国系の半導体素材メーカーの台頭が挙げられます。アドバンテストや東京エレクトロンといった装置メーカーに比べると業績の振れ幅は大きく、株価も短期的には上下しやすい銘柄です。一方で、AI向け半導体材料は年率30%程度の成長が期待される領域とされ、3〜5年の中期視点では十分にアップサイドが見込めると判断します。

装置メーカーには出遅れたものの、AI半導体ブームの裾野(材料分野)に厚く投資したい中長期投資家に向いていると考えます。


【銘柄の概要と強み】

昭和電工と日立化成の統合で生まれた「半導体材料の総合商社」

レゾナック・ホールディングスは、2023年1月に昭和電工が旧子会社の昭和電工マテリアルズ(旧・日立化成)を完全統合する形で誕生した、東証プライム上場の素材メーカーです。本社は東京、時価総額は9,000億円規模、全社売上高は約1.3兆円の規模を持ちます。

事業セグメントは大きく5つに分かれます。

  • 半導体・電子材料:CMPスラリー、封止材、フォトレジスト、感光性樹脂、銅張積層板など。最重要セグメント
  • モビリティ:自動車向け樹脂材料、機能性化学品など
  • イノベーション材料:機能性樹脂、化粧品・トイレタリー向け材料など
  • ケミカル:基礎化学品・産業ガス
  • エレクトロニクス(クラサスケミカル等):石油化学関連製品

このうち最重要なのが半導体・電子材料セグメントで、グループ全体の利益の大半を稼ぐ事業へと変貌しつつあります。

なぜレゾナックでなければならないのか

レゾナックの強みは、半導体の「後工程材料」と呼ばれる領域で複数の世界トップ製品を持つ点にあります。

  • CMPスラリー:シリコンウェハーを平らに研磨するための液体研磨剤。特にSTI(素子分離)用CMPスラリーで世界シェア1位とされています
  • 半導体封止材:チップを樹脂で覆い保護するパッケージング材料。世界トップクラスのシェア
  • 銅張積層板(CCL):プリント基板の基材として高シェア
  • 感光性樹脂・フォトレジスト:パターン形成工程で使用

AI半導体(特にHBM=高帯域メモリ)の製造では、チップを縦に積み重ねる「3次元実装」が必須になりますが、ここでレゾナックの後工程材料が大量に必要とされます。AI GPUが売れるほどHBMが必要になり、HBMが作られるほどレゾナックの材料が消費される、という構造です。装置と違って材料は「使い切り」なので、製造数量が増えるほど売上が伸びる、ストック性のある収益モデルを持っています。


【スコア評価】

評価軸 スコア 判定理由(1行)
今後の成長期待性 半導体・電子材料セグメントはAI向け年率30%成長を期待、全社では中計達成度を要見極め
今後の業績安定性 半導体市況の循環性に加え、ケミカル等の事業ポートフォリオ整理が継続中で振れ幅は大きい

【詳細レポート】

① 市場シェア

レゾナックの中核製品であるCMPスラリー、特にSTI(Shallow Trench Isolation:素子分離)用スラリーでは世界シェア1位とされています。CMPスラリー全体市場では世界トップ3に入る存在で、半導体封止材でも世界1位クラスのシェアを保有しています。

CMPスラリー市場の主要プレーヤー(推計):

順位 企業 主力分野
STI用1位 レゾナック 日本 STI用CMPスラリー、半導体封止材
上位 CMC Materials(DuPont傘下) 米国 タングステン用・銅配線用CMPスラリー
上位 Versum Materials(Merck傘下) 米国 各種スラリー・電子材料ガス
上位 Fujimi Incorporated 日本 ウェハ用CMPスラリー

CMPスラリーは半導体の微細化が進むほど高度な制御が必要になる、いわば「半導体製造の隠し味」のような存在です。一度製造プロセスに採用された材料は、変更すると歩留まりに大きく影響するため、顧客(半導体メーカー)が容易に他社製品に乗り換えにくいという、強い「スイッチングコスト」が働きます。

半導体封止材についても、AI向け先進パッケージ(CoWoS等)の需要拡大を背景に、レゾナックは安定した世界トップポジションを維持しています。

② 財務・PBR

2025年12月期実績:

  • 売上収益:1兆3,471億円(前期比 -3.2%)
  • コア営業利益:980億円規模(半導体・電子材料セグメントが過去最高)
  • 親会社株主帰属当期利益:290億円(前期比 -60.5%)※事業譲渡に伴う減損損失の影響

2026年12月期 会社予想:

  • 売上収益:1兆3,100億円(前期比 -2.8%)
  • コア営業利益:1,400億円(+28.3%)
  • 営業利益:1,050億円(+125.0%)
  • 当期利益:770億円(+165.2%)

ヘッドラインの売上は微減ですが、これは不採算事業の譲渡によるもので、本業の半導体・電子材料セグメントは2025年12月期に売上+12%、コア営業利益+34%と過去最高を更新しています。2026年12月期にコア営業利益が前期比+28.3%と大きく伸びる予想は、半導体材料を軸とした収益構造への転換が進んでいることを示しています。

PBR(株価純資産倍率)は時期により1倍前後で推移しやすく、装置メーカーに比べると地味なバリュエーションです。これは統合直後の負ののれん償却や事業整理が続いていることを市場が織り込んでいるためで、構造改革が完了すれば再評価の余地があると考えられます。

財務面では自己資本比率はやや低めで、有利子負債が一定程度残っている点には注意が必要です。一方で、本業のキャッシュ創出力は半導体材料セグメントを中心に強化されており、フリーキャッシュフローも改善傾向にあります。

③ グローバル比較

米CMC Materials(DuPont傘下)との比較:

CMC Materialsはタングステン用CMPスラリーや銅配線用スラリーで強く、レゾナックのSTI用とは主力領域が異なります。両社は競合しつつも、CMPスラリー市場の中で住み分けている部分があります。親会社のDuPontは半導体材料全般に投資を強化しており、規模で見るとDuPont全体の方が大きいですが、STI用やパッケージング材料の特定領域ではレゾナックが優位を保っています。

米Versum Materials(Merck傘下)との比較:

Versum Materialsは電子材料ガスやCMPスラリーを幅広く展開しており、独Merckの電子材料部門の中核です。Merckグループ全体の半導体材料売上規模は大きく、グローバルで見るとレゾナックよりも事業規模は大きいものの、CMPスラリー単独のシェアではレゾナックがトップ層を維持しています。

信越化学工業との関係:

同じ日本の半導体材料メーカーである信越化学はシリコンウェハー世界1位ですが、レゾナックとは取り扱う材料が異なります。信越がウェハー(基材)、レゾナックがCMPスラリー・封止材(プロセス材料)と、半導体製造の異なるレイヤーで世界トップ級のポジションを取っており、両社は補完関係にあります。

日本の強みと世界との差:

CMPスラリー・半導体封止材という後工程材料領域では、日本企業の存在感は依然として大きく、レゾナックは世界の半導体メーカー(TSMC、Samsung、SK hynix、Intelなど)に幅広く採用されています。一方で、企業規模(売上・時価総額)ではDuPontやMerckといった米欧の総合化学大手に水をあけられており、研究開発投資の絶対額では劣後する側面もあります。中国系メーカーの追い上げも、3〜5年スパンでは無視できないリスクです。

④ 中計検証

レゾナックは2025年〜2030年にかけての中期経営計画として、半導体・電子材料セグメントを成長の主軸に据え、全社のコア営業利益率を二桁台へ引き上げる方針を示しています。

  • 半導体・電子材料:AI向け年率30%程度の成長を期待
  • 全社:2026年12月期コア営業利益1,400億円(+28.3%)
  • 不採算事業の譲渡・撤退による事業ポートフォリオの「選択と集中」

達成可能性:普通〜やや高い

半導体・電子材料セグメントは2025年12月期に売上+12%、コア営業利益+34%という実績を出しており、目標とする年率30%成長は十分視野に入る水準です。AI向け需要が今後も拡大することを前提にすれば、本業の数字は中計の方向性と整合的です。一方で全社業績は事業譲渡や減損の影響を強く受けやすく、ヘッドラインの数字が上下しやすい点は留意が必要です。

主な下振れリスク:

  • 半導体市況の循環性:メモリ価格の急変動・在庫調整局面で材料需要が一時的に縮小する可能性
  • 統合シナジーの実現度合い:昭和電工と日立化成の統合は2023年スタートで、シナジーが想定どおりに発現するかは継続的な検証が必要
  • 中国半導体素材メーカーの台頭:CMPスラリー・封止材で中国国内勢の国産化が進めば、価格競争圧力が強まる懸念
  • 為替:海外売上比率が高く、円高進行で円換算売上が目減りするリスク
  • エチレン等ケミカル事業の構造不況:石油化学関連は中国の過剰生産で慢性的に厳しく、構造改革コストが先行する可能性

⑤ 直近1年のIR分析

ポジティブな点:

第一に、半導体・電子材料セグメントの過去最高益更新です。2025年12月期はこのセグメントが売上+12%・コア営業利益+34%と大幅成長し、AI半導体ブームの恩恵を材料側からしっかりと取り込めていることが数字で示されました。会社側はAI向け材料の年率30%成長を期待しており、HBM搭載量の増加や先進パッケージの拡大とともに、CMPスラリー・封止材の需要は中期的に拡大する見通しです。

第二に、2026年12月期のコア営業利益+28.3%、当期利益+165.2%という大幅増益予想です。事業譲渡や減損計上が一巡し、本業の収益が表面化してくる局面に入ることを会社自身が示しているのは前向きな材料です。

第三に、不採算事業の譲渡・構造改革の継続です。統合から3年が経過し、ポートフォリオの整理が着実に進んでいることは、長期的な収益性改善につながると考えられます。

ネガティブな点:

最大の懸念は、2025年12月期の最終利益が前期比 -60.5%と大きく落ち込んだことです。これは事業譲渡に伴う減損損失が主因で、本業の実力を示すコア営業利益では実態は悪くないものの、ヘッドラインの数字だけを見ると業績が悪化したように映りやすいのは事実です。

加えて、ケミカル事業や一部素材事業は中国メーカーの過剰生産による価格下落の影響を受けやすく、半導体・電子材料の好調を全社利益が十分に反映しきれていない側面があります。エチレンプラント等の構造改革コストが先行する局面では、短期的な業績ボラティリティが高まりやすい点に注意が必要です。

株価については、半導体材料関連株として注目されつつも、ヘッドラインの最終利益の振れによって短期的にぶれやすい傾向があります。中期目線で「コア営業利益のトレンド」を見続けることが、投資判断の上でカギになると考えられます。


【まとめ】

レゾナック・ホールディングスは、2023年に昭和電工と日立化成の統合で誕生した、半導体後工程材料の世界的リーディングカンパニーです。CMPスラリー(STI用世界1位)、半導体封止材(世界トップクラス)など、AI半導体製造に不可欠な材料を多数手がけ、装置メーカーよりも一歩裏方ながら、AI半導体ブームの裾野で着実に売上を伸ばす構造を持っています。

2025年12月期は事業ポートフォリオ整理に伴う減損計上で全社の最終利益は減益となりましたが、本業の半導体・電子材料セグメントは過去最高益を更新しました。2026年12月期はコア営業利益+28.3%、当期利益+165.2%の大幅増益が会社予想として示されており、構造改革の効果が表面化する局面に入りつつあります。AI向け半導体材料は年率30%程度の成長が見込まれる領域とされ、3〜5年の中期視点で見れば、本業の力強い成長を株価に取り込めるポテンシャルが期待できます。

一方で、半導体市況の循環性、統合シナジーの実現度合い、中国系メーカーの追い上げといったリスクも存在します。アドバンテストやレーザーテックといった装置メーカーに比べると業績の振れ幅が大きく、ヘッドラインの最終利益だけを見ていると判断を誤りやすい銘柄でもあります。中期視点で「半導体・電子材料セグメントのコア営業利益」を継続的にウォッチしながら、装置メーカーとは異なる「材料への投資」としてポートフォリオに加える、というアプローチが向いていると考えられます。

投資は自己責任でお願いします。


免責事項 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。 株式投資には価格変動リスクがあり、投資元本を割り込む可能性があります。 投資判断はご自身の責任において行ってください。 詳しくは免責事項ページをご確認ください。